美命の器はやがて、侘び寂びを纏う

赤や青といった色彩に加え、美命は創業当初から「本銀」と「本金」にこだわってきました。

やや厚みがあり、どこか温もりを感じる陶器の質感に、金や銀を施すことで、

民芸的な素朴さは凛としたモダンさへと姿を変える――その美しさを器好きの方と共有したく、

20年間こだわってきました。

とりわけ銀は、空気に触れることで徐々に酸化し、

最初の輝きとは異なる深い色合いへと変化していきます。

きらきらと華やかだった表情は、時を経て、静かに沈んだ艶へと変わり、

まるで器自体が呼吸し、成熟していくかのようです。

この変化こそが、「侘び寂び」を生む源であると私は感じています。

侘び寂びとは、ただ「古いもの」「不完全なもの」ではありません。

そこに内包された時の流れや、そこに宿る美を感じ取る、日本人ならではの繊細な感性です。

銀が酸化することを「劣化」と捉えるのではなく、「味わい」と受け取る心。

それが、美命の器をより美しく、より深く育ててくれていると信じています。

20年前、料理上手ではなかった私が「美命mikoto」を立ち上げた背景には、

家庭の料理が、器ひとつでハレの日の一皿に変わる器が欲しい、という発想がありました。

美命の器は、一見すると華やかですが、使い込むごとに銀が落ち着きを増し、

輝きは陰影へと移ろい、侘び寂びを纏う器になっていく・・・。

最初から古びたように見せようとするのは、あくまで作為的。

けれど、使い手の暮らしとともに時を重ね、自然に表情を変えていくその中に、美があるのです。

つまり、美命の器は“完成品”ではなく、“未完成の可能性”なのです。

変化し、成長し、深みを増していく器。それが、美命の器であり、

侘び寂びという日本独自の美意識を体現できる器でもあるのではと、あらためて思ったりしています。

もちろん、銀の変化を好まない方もいらっしゃいます。

そこで、2年前からは銀に代わる表現としてプラチナを導入しました。

変色はほとんどないものの、時を重ねる中で、

銀とは違う深みが生まれるのではと思い、いま経過観察中です。

器が語りはじめるのは、手に取られ、使われてから。なのです。

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